多摩美術大学図書館など5件に作品賞、日本免震構造協会賞|ケンプラッツより


多摩美術大学図書館外観

日本免震構造協会は、2008年度の日本免震構造協会賞を決定した。「多摩美術大学図書館」など5件の作品賞と、2件の技術賞を選んだ。
多摩美術大学図書館は、床付近が細くくびれたアーチで大空間を支えるデザインを実現するため、鉄骨+コンクリート造と免震を組み合わせた構造を採用した 建物だ。同協会は、「建築家、構造家、施工者による緊密かつ高度な共同作業によって生まれた」と高く評価した。このほかに「ソニーシティ」と「日産先端技 術開発センター事務棟」が作品賞を受賞した。作品賞・特別賞は、「武蔵野市防災・安全センター」と「セラミックパークMINO」が選ばれた。

この記事を読んで、昨年参加した大変興味深い内容だった構造建築家の佐々木睦先生の講演でのお話が思い出された。佐々木先生は、伊東氏から送られてきた「せんだいメディアテーク」のスケッチのFAXを見て、「伊東さんは、どうかしちゃったの?」と思いましたとおっしゃったのが印象的でした。しかし、その後はスケッチと格闘してあの鉄板の床と、フロアを縦に貫通するチューブの中に設備やエレベーターなどが通り、チューブ自体も構造体としての強度を持ったあの独特の建築を可能にしたことや、現場はさながら造船所のようだったこと(あの構造は造船の溶接技術によって可能であったこと)もとても楽しそうにお話されていて、聞いているこちらもわくわくしました。
多摩美術大学図書館も一筋縄ではいかなかったことを聞いて、自分が卒業した学校だということもあり機会があったら見てみたいと思っていました。コンセプトはアーチという古典的な構造をいかに現代的な形として表現するかということで、アーチ状に組み立てた鉄板の構造体の上に型枠を組んでコンクリートを流し込むというスチールとコンクリートによるハイブリッド構造としたそうです。その結果、壁厚は200?という薄さを可能にした上に、構造体ともなっているのです。さらに、それらアーチの壁は全てまっすぐではなく、カーブしながら傾斜しています。どれひとつ並行の壁はなく、不思議なデザインですが、それを実現可能にしている構造建築家というのは建築家以上に建築なのかもしれない。耐震偽装問題で、構造建築という言葉に対するイメージがネガティブであるのなら、こんなクリエイティブな仕事はないかもしれないんじゃないか?と感じたことを思い出しました。