石川直樹写真展-VERNACULAR 世界の片隅から-08/05/01@INAXギャラリー


展覧会のちらしと特別付録の石川直樹写真集「北極」
京橋のINAXギャラリーで開催されている石川直樹写真展にいってきました。この日は初日で、アーティスト・トークがあるということなので早速行ってきました。名前はJ-WAVEを聞いているとよく耳にしていたのですが、あまり作品を観たことはありませんでした。たまたま、最新号のPhotoGRAPHICAが藤原新也特集だったので買ったら、特別付録として取り下ろし新作の石川直樹写真集「北極」がついてきたので初めて写真と面と向かったのでした。
石川氏のそれまでの写真を通してみてきたわけではないので今回ほぼ初めて作品を観るわけなのですが、展覧会場となっているのがINAXギャラリーということだからなのかどうかはわかりませんが、世界中の5カ所にある「VERNACULAR住宅」というものを、1ヵ所につき20枚ずつを1枚のパネルに仕立てていました。その5ヵ所というのが
1.フランス…レズジーにある石灰岩の崖の窪みに食い込むように建てられた住居群。洞窟みたいに穴をほって入りこんでいるのではなく、ちょっと中途半端に崖に食い込んで半分の面が石灰岩の壁面になっている?(中の写真はなく、全て外観の写真)これらの住居は、中世以降に建てられたものだが、その昔、ラスコーの洞窟壁画が描かれた先史時代より人々の営みが行われてきた場所である。
2.岐阜…白川郷は言わずと知られた世界遺産の村。白川郷・五箇山の合掌造り集落世界遺産文化遺産になっている。合掌造りの屋根はどの家屋も東西を向いて建てられている。それは、屋根に満遍なく日が当たるようにするためと、南北それぞれの方向から強い風が吹くので、風を受ける面積を少なくするためらしい。その特徴は茅葺の屋根で、30〜40年毎に葺きかえられる。テレビで観たが、その葺き替えの作業には多くの人手がかかるので村中の人が参加するが、最近ではボランティアで村外からもやってくるらしい。展示されている写真は同じアングルで、合掌造りがほぼ同じサイズされてに並べられている。
3.西アフリカに位置するベナン共和国ベナンの水上住居。水上に住居を建てた理由は正確にはわからないが、ベナンのその奴隷制の歴史から追っ手から逃れる為では?ということも考えられるとのこと。移動にはカヌーを利用し、トイレなどは住居にはないため排泄はそのまま垂れ流し。混沌とした場であるらしい。
4.カナダ…北極圏に位置するイヌビック、タクトヤクタック。特別付録の写真集がこの北極の写真。家の形はごくごく平凡だが増改築を繰り返す。また、極寒の地であるためにその寒さのために後から住居の外側に断熱材を貼って、しかも断熱材の上から化粧壁などしないままの家の写真もある。マイナス40℃の世界はちょっと想像できない。
5.エチオピア…屋根は藁、壁は土壁でできている簡素な住居。形はそのまま三匹の子ぶたの藁の家という感じ。どの家もそれほど大きくはない。
今回のこの展覧会では、5カ所の土地が選ばれた理由というのが、居住者が主体でその住居を建てており(封建制度の世の中では、住む場所も住居も選べないということとの対比としての意味)、またその地域でのコミュニティというのが住居の形態からも汲み取れる。個々の住居としてそれぞれに差異はあるが、形態としては大きく逸脱せずにゆるやかな統一感があるところである。そのことを石川氏は「統一性と多様性」という表現をしている。
また、その住居のシリーズと対比して展示している写真が、エチオピアのダンサー、住居内でのコーヒーセレモニー(エチオピアはコーヒー発祥の地である)と、その藁葺き屋根の住居で暮らす人たちの3枚。比較的大きめのサイズの作品となっている。
さらに、ベナンの祭事のシリーズ。祭事や儀礼というのもは、コミュニティをつなぐためのものでありその風土というのもを色濃くあらわしているのものである。その風土にある同一性(統一性)と差異性を同時に抱え込んでいるのがバナキュラー建築である。
地球上の全てのことを知ることは到底無理であるが、写真が見たことのないものを見せてくれること確かである。そして、編集された写真が作品として新たな意味を持つということ。自分を取り巻く世界とは違う世界がたくさんあるということを写真は教えてくれる。