梅田正徳講演会 近未来のネオアールデコ08/05/08@AXISギャラリー


ネオアールデコという言葉はどこから来ているのか?ということですが、最近のインテリアトレンドの傾向がここ数年でデコラティブな方へきている。大雑把に言ってしまえば、デコとは装飾的ということで、その反対がモダンということになる。サローネでも、デコラティブな傾向は今年も続いているようです。
日本ではデザインというと、バウハウス以降デザインや建築では合理主義やモダニズムの時代が長く、それらが日本人の美意識に大きく影響しているということです。確かにメディアでもモダニズムを取り上げることが多いかもしれない。しかし海外では、19世紀末まで遡ればアーツ&クラフト運動以降、断続的に装飾美術、応用美術のムーブメントがありました。
今回の講演会では、日本ではいままであまり語られることのなかった、装飾的なデザインについていくつか具体的な作品(椅子が多い)を取り上げてお話されていました。特徴ごとに説明されていましたので、簡単にまとめてみます。
1.Applied Art Views in Chairs(椅子の応用美術的形態)
モダンではなく、装飾的なもの。1880年代に始まったアーツ&クラフトや、世紀末芸術や象徴主義的な流れにある。
ガウディ、ギマール、ガレなど。
2.Human Morphosis Style(人体形態)
椅子のデザインに人体形態を取り入れている。

オリバー・ムルグ(映画『2001年宇宙の旅』でヒルトンホテルのロビーにムルグの家具が使われている)
ヴェルナー・パントン(パントンチェアが有名。プラスチック好き。)
3.Hyper Geometric Organic
幾何学でオーガニックというか、曲線的ということでしょうか?

アルヴァ・アアルト(パイミオチェア)
カルロ・モリーニ(ソットサスに言わせると変人だったらしい。)
4.New International Style
なんですかね?う〜ん。なにをもってインターナショナル?
ソットサス、ハンス・ホライン、磯崎新
5.Sensual Style(官能形態)
平たく言えば、ちょっといやらしい感じ。。
6.Extract Style(引用形態)
引用です。何かのモチーフがそこに見て取れる感じ。第2期イタリアデザインの黄金期だそうです。
7.Artist's Expression
デザインというよりは、アートです。アートに家具の形態を使っている。だから使えない?使わない?
草間彌生、ロイ・リキテンシュタイン
8.Polydecor Style(多装飾形態)
インパクトありデザイン。

アレッサンドロ・メンディーニ(現在はアレッシィ社のイメージ・ディレクター的存在)

大橋晃朗(メンフィスの影響を受けている)
9.Animal Morphosis Style(動物形態)
そのまま、動物の形をデザインに取り入れている。かわいい感じ。
フィン・ユール「ペリカン
エーロ・アールニオ「ポニー」
喜多俊之「パーソナルチェア」(ミミがねずみっぽい)
10.Hyper Material Style(超素材主義)
それまで使わなかった素材を使う。新しい素材が持つ性質がどうデザインとして落とし込まれるか?
倉俣史朗「How High The Moon」(金網材をつかって、表層だけで椅子が構成されている!)

「ミス・ブランチ」(アクリルの中にバラが浮かんでいる。コンセプトは重力からの開放。)

マルセル・ワンダース「ノッテッド・チェア」(編んだロープを樹脂で固めた。現在のデコを牽引しているといっても過言ではない。)
11.Image of Eros and Death(エロスと死)
そういう暗黒なものに惹かれるというのは世の常。デザインでも同じ。
【総括として】
日本人は美意識は高いが、モダニズムの時代が長かっため、影響されすぎている。そのため、どうも装飾的なものを否定する傾向にあるということ。
「デザイン」という言葉がよく使われているが、「デザイン」という言葉の意味があいまいであると梅田氏は思うそうである。確かに、デザイン○○と、まるで形容詞として使っていることが多い。デザインとつけばかっこいいと勘違いしがちである。
デザイナーに対してのアドバイスとしては、「Hyper Material Style」は80年代以降のものであり、この傾向は開拓していけばいろいろ表現できそうだとのこと。新素材やテクノロジーをどのように使うかということであると思う。新しいものが生まれるという意味では可能性は無限大?!