現代美術の展望「VOCA展2008 −新しい平面の作家たち−」

第1回目から欠かさずこの展覧会だけは観ている。何故なら、面白いものが観れる気がするからである。「面白い」というのは「好き」とイコールというわけではないけれど、大抵は面白くて好きだと思える平面作品に新しく出会えるかもしれないとうきうきして出掛ける。
たまには、残念な年もあった。いつも一緒に観に行く友人と「今年は不作(失礼)だったね〜。」などと言い合うときもあるし、「これはすごくいいね。これだけでも観に来た価値はあるね。」などと言う時もある。ただ、毎年VOCA賞については納得する結果であった。しかし、今年に限っては自分がいいと思った作品がことごとく賞を逃している。これは一体どういうことなのか?私の感性が時代についていけないの!?などと戸惑ってしまった。2008年のVOCA展のカタログには、選考は接戦だったとなっていた。確かにそうかもしれない。けど、私がいいと思うものが選ばれなくて、違うのが選ばれているとなんというか納得できない気持ちになってしまった。でも、この際だがら私が選ぶ賞をここで勝手に発表したいと思っています。
【ボカ賞】1.阪本トクロウ title:「山水」 この作品が良かったのは、左側半分の抑えた画面という構図がこの作品の良さだといっていいと思う。山水というタイトル。でも、山水画ではない。どこかにある風景ではあるけれど。決して非現実的ではないありふれた景色を、奇をてらうこともなく淡々した画面がその向こうを見せてくれるような作品である。
http://homepage3.nifty.com/tokuro/

2.三宮一将 title:「合図のよう」 「彼女の名は知らない」(VOCA展では、作品は2点までOKなのです。1枚で判断が難しいからという理由だと思うのですが)作家が、ヨーロッパでキリスト教文化の中で孤独と向き合うことから自分の作品のテーマを再認識する旅での体験で感じた日常の場面を画面に定着させた作品。ヨーロッパへ旅行をして、その宗教建築のインパクトに圧倒された経験というのは多くの人にあることなのではないだろうか?木と紙で作られた建築がルーツの島国出身者からすれば、石造りの巨大建築に圧倒されないはずはない。圧倒されつつも、その圧力にじっと耐えることでその国や宗教の歴史が(内容はともかく)感じられるのではないだろうか。「彼女の名は知らない」では、ひんやりとした階段を降りるコツコツという足音が響く感じ。窓から差し込む日の光なども、いつかどこかで観たようなノスタルジーを感じすにはいられない。
「合図のよう」は空港の風景であるが、飛行機雲が作っている十字をキリスト教のアイコンと作者はしているのだが、キリスト教徒ではない私にとっては、空というキャンバスがナイフで切り裂かれたルーチョ・フォンタナの作品のように見えた。一瞬、飛行機雲によって分断された空がまた雲が消えて復活するような時間の流れまでそこから感じることができる。
まだまだ面白いと思う作家はいましたが、このおふたりは気になったので今後も活動も追いかけていこうと思っております。