モダニズム建築の保存はなぜ難しいのか?〔著:倉方俊輔〕@10+1 No.49 特集=現代建築・年問答集32

今、モダニズム建築の保存か?解体か?という問題が各地でおこっている。設備の老朽化や耐震性という現実的な問題が多いと思うが、やはり再開発のためということもある。スクラップビルドという高度成長経済を牽引してきた建築業があったことは確かである。問題は何を残すべきかということである。壊してしまったものはもとには戻らない。リノベーションで新たな命を吹き返す建築もあると思う。しかし、『10+1 No.49 特集=現代建築・年問答集32』の中で、《都城市民会館》(設計:菊竹清訓)の一般市民に対する「解体か保存か」のアンケートでは、解体が83%、保存が16%という結果だった。ただ、誘導的な設問だったらしいということだが、市民の声として「モダニズム建築は無装飾で冷たく、一般市民が愛着を感じる対象ではない」という解体推進派からの意見にも全く根拠がないとはいえないとしている。
また、こうも書かれている。

「伝統」「民意」「景観」「環境」……こうして見ていくと。モダニズム建築はこのところの流行語のすべてに逆らっているような存在でもある。そんな隙だらけの建築に「都市再生」や「ビジネスチャンス」の波は容赦なく襲いかかる。そして、《東京駅》は《三菱一号館》は復元され、《東京中央郵便局》は壊されゆく。

非常に難しい問題である。何でも保存すればいいというものでもないのは理解できるし、やはり思い入れのある建物がそのままの姿であって欲しいと思うのもまた人情。しかし、安全性については避けて通れない問題でもある。日本のような地震国では耐震性を無視するわけにもいかない。さあ、どうする?

10+1 No.49 特集=現代建築・都市問答集32

10+1 No.49 特集=現代建築・都市問答集32