舟越桂 夏の邸宅@東京都庭園美術館 記念講演会「舟越桂 版画の領域」09.08.30.


美術館外観デス

図録など
8月30日に、東京都庭園美術館で『舟越桂 夏の邸宅』展を観に行きました。記念講演会があったので、その内容のメモを少しとりました。講演会は「舟越桂 版画の領域」ということで、版画の仕事についての話が中心でした。舟越桂といえば彫刻なのですが、版画の仕事の場合はご本人曰く勤勉なのだそうです。版画の仕事は工房で行うそうです。版画を制作するためには設備が必要なのです。ですから、大体2週間という期間で行われ、作業は朝から夜まで行われる。版画というのは、そういう意味で制作するのに費用がかかるわけです。その決められた時間の中で、結果を出さなければならない。結果というのは、作品のクオリティという意味だけでなく点数もあります。そして、出版するのですから、やはり少しは「売る」ということも考えなければならない。この「売る」ということが重要なのだと思いますが、作家として単に売れそうなものを作るということではない。作品として成立しているものを作ることが重要なのですが、少しは売りやすいということを考えるということです。例えば女性像は人気がありますから、そういう作品も入れるということをおっしゃってました。確かに、自分が版画を買う場合にどこにそれを飾るかということもありますからね。自分ひとりで楽しむわけじゃなくて、その空間にいる人が楽しめる方がいいと思うのです。そういう意味で、モチーフとして親しみやすいものが売りやすいというのは理解できます。
舟越さん曰く、「版画は本来の仕事ではないので、刺激がなければならない」。それは、大体3年に1度くらいの周期に行うそうなのですが、様々な技法でやっているのでやったことのない技法を試してみることにしているそうですが、今回は技術的だけでなく意識的に色を使ったそうです。色なしの方がいいと思うものもあったが、挑戦したそうです。ご本人は「食い下がった」という表現をされていました。それが、戦いっぽいなあと思いました。
画を描くのとは違って、版画はそれぞれの版は別になります。もしも修正するならそれぞれの版を修正することになり、頭の中でそういうことがぐちゃぐちゃになるタイプであるらしく、それぞれの版を意識することが難しいそうです。
面白いなと思った話で、版画を摺る=形として表れた時に、不満だと手を入れてしまう。そして、人の目がやはり気になるそうです。それは、自分も不満だと思っているときに、プリンター(摺るプロのスタッフ)が摺りあがった作品を最初に見た時の表情を見てしまう。どう感じているか?プリンターの人たちは、そういう決まりなのかわからないが決まって無表情であることあ多い。それは、アーティストに対しての配慮というか作品に影響を与えないためだと思われる。でも、過去に数回だけプリンターが「Wao!」(海外での話デス)と言われたことがあってそのときはやった!という感じだったそうだ。また、版画は人とのコラボレーションなのですべてを自分の思い通りにはならない。しかし、時として偶然に不思議なこともある。例えば、作品をポジフィルムで残すようになって、2枚の画の目と目が重なったときに違う第3の表情がでてきた。その経験から、違う画の版を重ねて摺って新しい作品が生まれる。これは版画ならではなのかもしれません。
とりあえず、前半はココまで。まだまだ続きがありますが、今日はこのへんで。