いま金持ちがなすべきこと、してほしいこと−NB online という記事を読んで

いま金持ちがなすべきこと、してほしいこと−NB online
養老先生と隈さんの対談である「ともだおれ」思想が日本を救うというシリーズ対談の中で、インテリアの話があった。養老先生が、隈さんの事務所の近くに住んでいるイギリス人のお宅に行ったときの話が面白かった。
インテリアにシャンデリアや大理石の彫刻とかあってすごいという話の中で、カーテンをドレーパーという、世界で3人しかいない職人の2人を呼んでやってもらったというところ。まず、カーテン扱っている会社にいたのに、「ドレーパー」なる仕事というか職人なんて始めて聞いた。カーテンのひだを寄せる職人だそうだ。カーテンは通常両開きなのだが、そうすると右と左の模様が左右対称なんですけど(っていうか、そうじゃないとクレームですヨ)そのままじゃつまらないからわざわざひだを美的な非対称になるように折り込むらしい。その専門の職人が「ドレーパー」。すごいですよね?日本でも、カーテン専門のお店というのがあって、かなりいろいろな装飾を作ることができるのですが「ドレーパー」はいないと思う。多分そんな仕事頼む人いないし。あと、壁紙の話のとこ。引用しますね。

そのイギリス人の家をもっと言うと、壁紙。壁紙が森の模様なんだよね。木があって、鳥がいて、鳥の種類を見ると、どう見てもツルとか東洋の意匠。2階に上がる螺旋階段のところにも壁紙が来ているんだけど、不規則な螺旋階段のへりでも、壁紙の模様は全部地面になっている。これは絶対に特注だわな。で、聞いてみたら、イギリスにある自分の館にある壁紙と同じもので、200年前の意匠だと。今でも中国で同じものをつくっているから、その型紙でつくらせたんだ、と答えるわけですよ。

日本では、壁紙ってまず存在感あるのって嫌われるというか飽きられるから(と提案する方は思いがちなんで)、柄物なんて提案あまりしない。まず、一度貼ったら替えないでしょう?私の実家だって、もう変色してるから替えてあげたいけど。もし気に入ったものがあったとしても、それと同じものがあるとは限らない。というか、日本はデザインでも古いものが残っていることは本当に少ない。どんどん新しいものを発売しないと消費に結びつかないから。伝統的な文様とかは違うのかもしれないけど、壁紙なんて大量生産品で大量消費されるもののデザインなんてすぐに消えてしまうのである。それは、日本という国がそういう社会を作ったからなんだけどね。
インテリアのことに関して言えば、隈さんが日本にはインテリア界というものがないって言ってたけどそうじゃない。コントラクトという市場があって、プロはいるじゃん。一般の消費者である自分視点で考えても、住宅なんてスクラップアンドビルドの日本に工芸品のようなインテリアなんて考えられないでしょう。
仕事で家を見せる必要のある人とか、こだわりのある人はきっとそれなりに考えているだろう。でも日本人にとって、外と中は違う世界なのですよ。多分自宅を他人に見せる場合は、応接間やリビングくらいに決まっている。日本家屋だと広間という空間もありました。そういうフレキシブルな空間に、重たい家具とか置かないし。今の日本は、日本の文化と西洋的なるものがごちゃ混ぜになっているから混沌としているのだ。(と、いいつつも外人の日本趣味はセンスいいとかあるけど)
西洋的なるものに対する憧れって絶対にある。というか、私がイタリアの展示会に行ってそのクオリティと種類に圧倒されたことからしても「やっぱりイタリアの家具はすごいお」と思ってしまう。日本のすばらしい家具を知っているけど、それとこれとは別なのである。イタリアの家具メーカーというのはもともとどんなメーカーでも出発は小規模で、家族経営が多かった。職人もプライドがあってこだわって作っていた。(今ではいくつかのメーカーが合体して巨大グループができているけれど)最高の素材と最高のクオリティの仕事、美しい造形を目指して作り出した製品を、そうそう簡単に廃番にはしない。廃番という考えもないと思う。いわゆる「受注生産」なのだから、廃番なんてないのです。もし、それが欲しいといわれればまた同じものを作ればいい。日本のメーカーでは考えにくいことだと思う。インハウスデザイナーだって、有名デザイナーだって同じ気持ちでクリエイトしているのですよ。でも、日本ではデザインの地位が上がらないということの原因は生産ラインとか社会のしくみがあるからなんだろうね。一言で語れるほど社会は単純じゃないけれど。
そんな日本でインテリアを生業にするってことが、どんなに厳しいか。よくわかっている。好きじゃないとできない仕事。でも、経営者たちは、働く人間を大切にしないよね。確かに、儲からない世の中だけど、せめて働くことが喜びになるような仕事だったらいいのにね。今の時代に、そんな仕事はないのかもしれなね。(気がついたら愚痴になっていました。申し訳ない。。)
着地が違うところになってしまいました。