インテリア関係クリエイティブ系の人へ!知っていると語れるかも?【佐川美術館〜樂吉左衛門館 現代の茶室〜】

インテリア関係の会社に勤めていても、最初はあまり建築について
それほど詳しくないという人は意外に多かったりします。
も、実際に建築家の方やゼネコンの方と打ち合わせすると
意匠の話とかになっちゃったりしますよね?
まあ、難しいことはボロが出てしまうかもしれないので
新しくて、そんなに語られてないところ?っていうのはどうでしょう?
昨日の新日曜美術館で、佐川美術館内に昨年9月にオープンした
樂吉左衞門館の計画から竣工までの過程を放送していました。

施工を担当した竹中工務店はさぞ大変だったと思います。
実物大模型(ってでかいヨ)を作って開口部からどのように
外光が入るかどうかなどを検討してた。
現代において、そこまでのこだわりを貫くことは大変だと思う。
人もお金もたくさん動くし。
でも、CGでは絶対に感じられない素材感や空気感というものが
茶室においては重要で、現代では最初に割愛されてしまう「手間」というものを
惜しまずに、時間を掛けて材料を探し、手間をかけて建材に仕立てる様子を
私たち建築やインテリアに携わるものは理解しておいた方がいい。

【具体的な注目ポイント】
1.コンクリートの色
コンクリートというのは、今はやっているのはどちらかというと白っぽいもの
が好まれる傾向。樂さんは色、黒っぽいコンクリートにこだわっていた。
黒の顔料を入れるとして、ただ強度の問題があるために顔料が入れられる限界
が6%とかそんなことを言っていたように思う。
そういうことを検証して実現化するのは、思っているよりも手間が掛ってる。

2.さらにコンクリートに木目模様を転写
コンクリートなのに、木目の模様が転写されている。普通コンクリートを打つとき
はコンクリートパネルというパネルで型枠を作って、そこに流し込むものだけど
そのコンクリートに接するところに、杉板を入れてその杉板の木目の凹凸をつける
のだ。実際、コンクリなの?材木なの?と思ってしまう
しかも黒っぽいし。ちょっと煤けた感じの木材で構成してるのかと思ってしまう。

3.ジンバブエ共和国産のジンバブエブラック(花崗岩)
石も木材もひとつの塊が単位になる。今回の場合、割れ肌で使うので質感とか色
で選んでるけど、カットしてみないとどんな色や質感かわからないからなかなかの
博打である。まあ、使ってる量が半端でないのと上客だから選ばせてくれるけど
自然素材というのは、色も模様も違って当然だけどそれを許さない人っているよ。

4.長さ4Mに及ぶ手漉き和紙
これだけ巨大になると、紙といえども結構思いし技術的にも難しそう。
でも、確かに一枚和紙でなくちゃダメだというのはわかる。光を透過した時に
継いであったらそこだけ二重になってしまうし、それは興ざめというか気になる。
あと、茶室の障子の和紙がモダンなパターンになっていたのが気になった。
(TOSOのSUKIGAMIという手漉き和紙のロールスクリーン〈牡丹雪〉を連想した)

5.水露地
コンクリートで、円筒形の空間を作り出している。そのモチーフになっているのが
関根信夫の「位相−大地」だという。なるほど。たしかに、あの質量感というのは
圧倒的だと思う。ただし「位相−大地」は地上から見るが、水露地は地下から見る。
コンクリートの壁を伝って流れてくる水が、静謐な空間を演出している。

関根信夫「位相−大地」

6.光取りのスリット
実物大模型によって、採光の様子を検討している。この建物でのコンセプトである
「光と闇」。闇があるからこそ、光の存在が際立つ。
現代では、暗闇を体験すること自体がなくなりつつある。あえて暗闇をつくりだす
ことによって、光と闇の織り成す空間によって心が穏やかに導かれる。
空間が与える心理的作用に光と影は重要な要素である。

現代、多くの建築物がスクラップ&ビルドを繰り返されている。
名建築とされているものさえ、老朽化を理由に取り壊しが実施され、残すべきだった
と後から思ってももう遅い。
樂吉左衛門館がこの先、1000年後にも残る建築になればいいのに。
21世紀の日本の美的センスが普遍性を勝ち得ることができて、その時代に生きていた
ことを後世の人たちからうらやましがられますように。